「何を惚けたことを」
 ランバート伯爵がつまらないものでも聞いたかのように、そう溢した。
「ほんと素直じゃないんだから、エドは」
 メリアがテーブルに出して行ってくれたクッキーを一枚つまみ、モールディング伯爵はパクリとそれを口に入れる。
「女好きのお前と一緒にするな。俺はそんなものには興味は無い」
 ランバート伯爵は、濡れた衣服を椅子の後ろに取り敢えずは引っ掛けておくことにした。
「なんだ、人聞きの悪い。恋多き男だと言ってくれないか」
 モールディング伯爵の言葉をふん鼻で笑うと、ランバート伯爵は再び椅子に腰掛けた。

 それに対してはなんのコメントもしないランバート伯爵に、モールディング伯爵は言葉を付け足した。

「君が素直にならないならそれでも構わないさ。僕はそんな君にも遠慮なんてしないよ? 僕もどうやら彼女が少し気に入ってしまったみたいだからさ」

 二つ目のクッキーを口に入れるモールディング伯爵を、ランバート伯爵はじっと目を細めて見つめていた。