しれっとした顔で、出された紅茶を優雅に飲むランバート伯爵はメリアに目もくれない。
「おいおい、エド。いい加減にしろよ? 見ろ、彼女が今にも泣きそうだ」
 モールディング伯爵がランバート伯爵を諌める。

「いえ、あんな態度を取ったのですから、当然の報いです・・・」
 メリアは泣くまいと、無理に笑顔を浮かべる。
「すまない・・・、彼は女性の扱いを知らないんだ。彼の代わりに僕が謝るよ」
 モールディング伯爵が今にも泣き出しそうなメリアを心配そうに伺っている。
「そんな、モールディング様がどうして謝るんですか・・・?」
 メリアが慌てて後ずさったその直後のことだ。

 あの悲劇が起きた・・・。

『バシャッ』

 嫌な予感がしていた・・・。

 ゆっくりと顔を上げると、ランバートのティーカップからティーが零れ落ち、ぽたぽたとその衣服を濡らしていた。

「あ・・・」

 メリアの後ずさったときに、運悪くテーブルの脚に足を引っ掛けてしまったらしい。
 その衝撃で、ランバート伯爵のティーカップからティーがひっくり返ったようだ。