「イザベラ様、なぜ突然そのようなことを?」
 デイ・ルイス侯爵は、極力彼女の気に触れないようにと、さり気無く尋ねてみることにした。

「気が変わったのだ。考えてみれば、奴を性懲りも無く、いつまでも宮殿内で拘束しておく訳にもいかぬしな」
 女王はカツカツと高いヒールのかかとを響かせながら、そう答えた。
「そうですか・・・。けれど、あの者は野放しにしておけばまた大罪を繰り返しかねません」
「くどいぞ、アドルフ! 何も宮殿内で拘束せずとも、奴の取調べは継続できる」

 女王はきっときつい目でデイ・ルイス侯爵を睨み上げると、つんと前を向いてしまった。

 デイ・ルイス侯爵は謝罪の意を込めて深々と頭を下げると、気付かれないように歯を噛み締めた。