「ひどいです、ランバート伯爵!! メリアは、メリアは・・・」
 テレサが涙を堪えながらたまらずに声を出した。
「テレサ、いいのよ。全部私のせいなの」
 ベッドから降りたメリアは、肩を震わせているテレサの手にそっと触れた。
「さ、荷物を纏めるのを手伝ってくれる?」
 にっこりと微笑み、メリアは何も無かったかのように涙をぐっと奥に引っ込めた。

「半刻程したら、荷物を持って下へ降りて来い。パトリックの屋敷まで送っていく」

 機械的にそれだけ言い残すと、振り返りもせずにエドマンドは客室から出て行ってしまった。


「な、な・・・・・・、何なのあれっ! 許せない!! メリアが何したって言うのよ!?」
 テレサがトランクに洋服を畳み入れながら、ぼろぼろと涙を溢して言った。
「エドマンド様は十分すぎる位私に良くして下さったわ。これ以上迷惑は掛けられない。最初から令嬢の振りなんて無理なことだったのよ。遅かれ早かれこうなることは分か
っていたわ」
 凛としたメリアの横顔を見つめ、テレサはぐっと唇を噛み締めた。
「メリア、あなた、強くなったのね・・・・・・。わたし、あなたを自慢に思うわ」
 がばっとメリアに抱きつき、わんわんと声を上げて泣くテレサを、メリアが苦笑いしながら慰めた。
「でも、テレサ。・・・・・・ありがとうね」