「実は昨晩、俺は彼女とパトリック・モールディング伯爵より少し遅れて舞踏会へと出席するつもりでした。敷地内の道を会場である屋敷目指し馬車で走っていたとき、
倒れている彼女を見つけたんです。意識を失っていた彼女を見つけたのが早くて良かった。・・・という話を警部補から聞いていませんか?」
 はっとしてデイ・ルイス侯爵はエドマンドの冷ややかな目を見つめた。

「結局、俺は会場へは行かず、彼女をそのまま馬車で拾いアボット医師のところへ向かった経緯です。お疑いなら、アボット医師にお尋ねになるといい」
「・・・・・・!」
 じっと目を細め、デイ・ルイス侯爵は僅かに怯み、足元へと視線を落とした。

「そうか・・・。いきなり掴みかかるような真似をして申し訳無かった。そのシャツは弁償しよう」

 そう言われて初めてエドマンンドはシャツのボタンがいくつか弾け飛んでしまっていたことに気付き、肩を竦める。
「いえ、結構ですよ。シャツの一枚や二枚」

 デイ・ルイス侯爵は少し落ち着いたのか、さっきよりも若干穏やかな声で付け足した。

「・・・というより、正直わたしは君を疑っていた。君が闇の騎士(ダーク・ナイト)の共謀者では無いのかとね・・・。警部補が奴の逃亡後に、敷地内で君が乗った馬車を見たと
話しているのを聞いて冷静な判断ができなくなっていた・・・。中に赤髪の令嬢がぐったりして乗っていたと聞いたときには、頭に血が昇って、気付いたらここへ乗り込んでいた

 ふうと大きく息をつくと、デイ・ルイス侯爵は階段の手すりへともたれ掛かった。

「ミス・メリアは無事なのか・・・??」
 エドマンドは無表情のまま頷いた。
「命には別状はないですよ。ただ、ショックで体調を崩してしまい、療養の為実家に戻しました」 

 デイ・ルイス侯爵はくくくっと肩を揺らした。

「彼女が無事で良かったよ」