「その子には闇の騎士(ダーク・ナイト)の正体は黙っておけ。彼女をこれ以上危険に巻き込む訳にはいかない。本当ならばなるべくオレとは関わりを持つべきではないんだ」
 パトリックはこのとき初めて友人であるエドマンドの秘めたる想いに気付いた。
「エド、君はやっぱりメリアを・・・」
「オレにはその資格は無い。そして、その子を守ることさえな・・・・・・。だからお前しかいないんだ、その子を守れるのは。しっかりしろ、パトリック。二度とその子から目を
離すんじゃない。本気で守る気があるのならば、な」

 メリアを抱き上げたまま、パトリックが何か言おうとしたが、エドマンドはそれを聞く前に踵を返した。
 
 立ち去って行く少し淋しげな友人の背中に、パトリックは小さく呟いた。
「君はそれでいいのか? エド・・・」




 その日、メイグランドの街に号外の記事が舞い踊った。
”アドルフ・デイ・ルイス侯爵家の敷地内で、闇の騎士(ダーク・ナイト)の身柄を拘束!!”の見出しである。
 捕まった男は、闇の騎士(ダーク・ナイト)の衣装を身に纏い、敷地内の道脇で気を失って倒れているところを、警官に拘束されたらしい。
 しかし、男は容疑を否認し、「自分は人に雇われただけのただの何でも屋だ、怪盗ではない。馬車で移動中に何者かに頭を殴られ、その後の記憶は無い」と、訴えているそうだ。