(え・・・・・・)
真っ青な顔色のまま、メリアはゆっくりとそちらを振り返った。
「お久しぶりです、デイ・ルイス侯爵。先日の夜会ではゆっくりと挨拶もできなかったもので」
メリアは目を丸くしてその人物を見上げた。
(ランバート伯爵!?)
メリアがそう心の中で叫んだと同時に、デイ・ルイス侯爵が先に口を開いた。
「なぜ君がここへ? エドマンド・ランバート伯爵」
じっと目を細め、デイ・ルイス侯爵はさり気無く握り締めていた例の紙をポケットにそっと押し込めた。
「俺も仕事と言ったところでしょうか」
エドマンドの言葉に、デイ・ルイス侯爵は腑に落ちないという顔で彼に訊ねた。
「仕事とは? この屋敷はイザベラ女王陛下のご命令で、調査の対象になっている。よって、部外者の立ち入りは一切禁止されている筈・・・」
まるで怯んだ様子も見せず、エドマンドは変わらぬ淡々とした表情でデイ・ルイスに応えた。
「アダム・クラーク男爵が無罪を訴え始め、自らの弁護を受け入れてくれる相手を探していたのはご存知で?」
デイ・ルイス侯爵は、初耳だとばかりに、伺うような目つきでエドマンドを見つめた。
「結果だけ言えば、俺が彼の弁護を引き受けることに。つまり、ここへはあなた方調査にあたる側とは反対に、彼を弁護する側としての調査を任されたと言えば分かりやすいでしょうか」
理髪そうなエドマンドの翡翠色の目が、デイ・ルイス侯爵をじっと見返している。



