メリアと怪盗伯爵

 だが、それには他の調査員にうまい誤魔化しが必要そうだ。

(彼らには、この部屋の存在はしばらく黙っておいた方が良さそうだ・・・)
 少なくとも、デイ・ルイス侯爵が探し物を見つけるまでは他の誰にもこの部屋の存在を知られる訳にはいかない。

 諦めて、彼が立ち去ろうとしたとき、ふと狭い視界に何か白いものがちらついた。
 不審に思い、デイ・ルイス侯爵は、ソファーにかけられた布の上を三本目のマッチで照らしじっと見つめた。

「これは・・・」

 この埃っぽい部屋に不似合いな白く新しい上質な紙。
 手にとると、それがかなりしっかりとした材質の紙だということが分かった。
 何やらそこに文字が書かれていることに気付き、彼はマッチの火を更に近付ける。


”貴殿の探し物はすでにここには無いだろう。
 
 どんなに美しく完璧な造形でも、黒き土台を塗り固めた白き石膏は、小さな歪で罅が入る。
 そしてそれはじわじわと拡がりゆき、やがて無残にも剥がれ落ちてしまうもの・・・。

 真実はいずれ明らかになる。

                ダーク・ナイト  ”


 デイ・ルイス侯爵は、無表情のまま、その紙を手の中で握り潰した。
 これは、闇の騎士(ダーク・ナイト)の挑戦状に違い無かった。
 デイ・ルイス侯爵が、”契約書”を探しにこの場を訪れることを予測し、あの大怪盗は先にそれを手に入れてしまったことになる。
 しかも、それはデイ・ルイス侯爵の弱みになるだろう重要な書類だ。

「・・・ふ・・・、こそ泥ががやってくれるな」

 デイ・ルイス侯爵は呟く。
 
「わたしに真っ向から挑む気か・・・。後で後悔することになるぞ、闇の騎士(ダーク・ナイト)」