部屋の中央まで歩んだ後、デイ・ルイス侯爵はふと床面の扉のような存在に気付く。
(扉・・・? 倉庫か何かか??)
彼はゆっくりと屈み、扉を強く引き上げてみた。
軋むような音を立て、扉は再び埃を巻き上げながら開いた。
中は暗いが、細い階段が地下へ続いている。
(地下室・・・)
じっと目を細め、デイ・ルイス侯爵はポケットに入っていたマッチを取り出す。
マッチに火を灯すと、彼は迷うことなく階段を歩み降りてゆく。
「まさか、こんな場所に地下室があるとは・・・」
そう口にしながらも、彼は確信していた。
ここに、必ずや”契約書”なるものが隠されているだろうことを。
『ジジ』と、マッチが燃えて短くなり、デイ・ルイス侯爵の指に近付いてきたとき、彼は一本目のマッチを吹き消し、新たなマッチに火を灯した。
その頃には、地下室の入り口まで到着していて、彼は小さな火の光で地下のドアをまじまじと見つめた。
「・・・アダム・クラークは、うまく隠したものだな」
ひどく感心したようにそう呟き、デイ・ルイス侯爵は扉をゆっくりと開けた。
暗がりで、視界がかなり狭くはあったが、彼の目に飛び込んできたのは、アダム・クラーク男爵の屋敷に眠る、今は使われていない家具や絵画。その他諸々の雑貨達。
箱詰めされたものも多く、この中全てをチェックするにはかなりの時間を有するだろうことが明らかだった。
ましてや、このようなマッチの明かりを頼りにそんな大掛かりな作業をできる筈も無く・・・。
取り敢えずところ、上へ一旦戻って、ちゃんとした明かりを持って出直す必要がありそうだ。



