「悪いが、俺はそれを容認できない」
「エド、君には拒否権は無いと言っただろう?」

 エドマンドが首を横に振り、ソファーから立ち上がりかけるのを、パトリックがその腕を掴んで静止させた。

「こうなってしまったには、半分は君の責任でもあるんだ」
 パトリックは、エドマンドが「わかった」と言うまではその手を離さないつもりらしい。

「おい」
 うんざりしたように、エドマンドはぐいと掴まれ腕を引っ張ってみる。が、相手も相当本気らしく、簡単には離しそうには無い。
「パトリック、この手を離せ。俺は忙しいんだ。今日中に目を通してしまわなければならない書類がある」
 それでもエドマンドの目をじっと見つめたまま、パトリックはその手を離そうとはしない・・・。

「そうか。では、彼女を預かると言ってくれ。そうすれば、僕はすぐにでもこの部屋を出て行くよ」
 にっこりと笑いかけるが、そのパトリックの笑みにはいつもの柔らかさは見当たらない。
 エドマンドの拒否は一切受け付けるつもりは無いようだ。