「で、では、一体わたしはどうすれば・・・???」

 メリアは恐ろしさで顔を引き攣らせた。
 ここに来て、初めて権力の強さの恐ろしさを知ったような気がしていた。

「・・・君をエドのところへ預ける」
「え?」

 小さく呟いたパトリックの声。
 メリアは信じられない彼の言葉に驚き目を瞬かせた。

「君はしばらくエドの屋敷に身を置くんだ。そうだな・・・、君は彼の遠い親戚ということに。田舎からしばらく彼の屋敷に遊びに来ているという設定はどうだろう?」
 そう言ったパトリックの顔は、最高のアイディアを思いついたとばかりの自身満々な表情でいっぱいだ。

「そ、そんな・・・! わたしにはとてもできません!!」

 ぶんぶんと首を横に振り、メリアはパトリックに抗議を唱えた。

「だいたい、そんなことをすればランバート伯爵にものすご〜〜〜く迷惑がかかってしまいますし、それにですね、デイ・ルイス侯爵だって、そんな嘘はすぐに見破ってしまうでしょうし・・・」
 メリアの懸命な抗議空しく、パトリックはにこりと微笑み言った。

「大丈夫だよ。エドには君をクラーク家の屋敷からクビにしたっていう大きな借りがあるだろう? それに、彼の家は少々複雑で、親類があちこちに散らばっているんだ。絶対にバレっこないさ」
 
 腰に手を当て、パトリックは爽やかな白い笑顔を浮かべた。
 青くなって一瞬気が遠くなるメリアとは裏腹に・・・。