「エド・・・。これはまずいことになったかもしれない・・・」

 パトリックは手紙をエドマンドに読むように差し出した。
 


”親愛なる パトリック・モールディング伯爵。

 アダム・クラーク男爵との手紙の受け渡しを引き受けてくれたことに、まず礼を言いたい。
 だが、君には知らせていなかったことがある。君の仕事に支障が出るかもしれないと危惧したからだ。君の家とクラーク家には二世代前からの交流があると聞いていた為だ。
 
 今回君に預けたアダム・クラーク男爵宛ての手紙だが、彼が不正を働いて得たという金の問題についての確認書類だった。
 彼がそれを否認するならば、おそらくなんらかの返答書類を書いてくる筈だと踏んだ。
 
 どちらにしろ、彼は女王陛下に訴えられることとなるだろう。
 クラーク家と交流のある君には酷なことかもしれないが、何も気に病むことは無い。
 君の協力により大きくこのメイグランドの貴族社会が一歩前進したということは確かだ。
 
 アドルフ・デイ・ルイス ”
   



「やられた・・・!」
 エドマンドは、悔しそうに手紙を机に叩き付けた。

「僕が騙されている振りをして、わざと手紙を預かったことを、デイ・ルイス侯爵は全部知っていたみたいだね・・・。泳がせるつもりが、裏をかかれたって事か・・・」
 二人は互いに目で頷き合う。

「デイ・ルイス。やはり、食えない男だ・・・」
 二人の深刻な話に、メリアは侍女風情が聞いてはいけない事柄だったと後悔し始める。