帰宅したパトリックは、目を潤ませながらメリアを抱擁していた。

「あ、あの、パトリック様…?」
「メリア! 君がいない二日間はまさに地獄のようだった…。何か目にする度に、今頃君はどうしているかと気になって、落ち着かないし…」
パトリックの荷物を受け取ろうとしたメリアはギュウと締め付けられながら苦笑を漏らした。

(パトリック様ったら、そんな大袈裟な……)
メリアが呆れながらそんなことを心の中で呟いていたそのとき、馬車からもう一人の紳士が降り立った。
「よし決めた! 次からは必ず君も連れて行くことにするよ! それがいい!」

(ランバート様…)
 パトリックの腕ごしにメリアは馬車から降りたばかりのエドマンドと目がかち合った。
すぐに逸らされるだろうと思っていたメリアだが、彼はそんなメリアをじっと見つめている。

「子どもみたいなことを仰っしゃらないで、早くお荷物を。ランバート様がお待ちですのに」
困ったようにメリアはパトリックを宥めると、自然なそぶりで抱き締められていた腕を解いた。

「お疲れ様です、ランバート様。お荷物をお預かりします」
以前彼に対して抱いていた緊張は、今やほとんど感じることは無くなっていた。
ただ、この青年はあまり感情の表現がうまくないだけだということが、ようやくメリアにも分かってきたせいだ。

「結構。君に持てる程の重さの荷ならば、初めから君に頼むなどしない」
そう言ったエドマンドは、ふいとメリアから目を背ける。
メリアはすぐに彼の異変に感づく。

(なんだかちょっと不機嫌かしら…?)