「すぐに分かる。君はもうこの屋敷には関わらない方が懸命だろう…」

そう言った直後、闇の騎士(ダーク・ナイト)は、ランプの火を吹き消してしまった。
「あっ」
真っ暗がりになってしまった地下の物置き部屋で、メリアは黒の騎士(ダーク・ナイト)が部屋を出て行くのを感じた。

「待って! 大怪盗さん! あなたは一体誰なの…?!」
メリアは咄嗟にそう叫んでいた。
慌てて手探りで暗がりの中、部屋から脱出し、彼の姿を追いかけ階段を駆け上がる。
書庫に飛び出したときには、闇の騎士(ダーク・ナイト)の姿はどこにも見当たらなかった。
ただ、月明かりに照らし出された部屋で、ハタハタとカーテンが揺らめき、窓が開け放たれているだけだ。
メリアは窓に駆け寄り、見下ろした。

(いない…… )

二階の窓から飛び降りたのか、或は屋根へ飛び上がったのか…。
いずれにしても、彼の身の軽さは並大抵のものでは無い。

「あなたは…、あなたは一体何者なの…?」
メリアは切な気に月を見上げた。