「今日帰りたくね~」
頭をくしゃくしゃしながらそう発する。
『えっ、なんで?』
「いや…別に」
黙ったまま下を向く。
『もしかして、お姉ちゃんと喧嘩でもしたっ?』
図星を言い当てニヤリとする私を反抗的に彼は見る。
『原因は?』
「、、、わかんね。
いや、俺が悪い」
『なんで?』
「最近会えないからさ、むしゃくしゃして
むしろお前といる時間の方が長いくらいだし」
小さな声でボソッとそんな事を言う彼に私はちょっと傷ついた。
なんでだろ…。
『悪かったわねっ
よし!
予定変更っ』
ニカッと笑いながら彼を見て腕を強引に引っ張る。
「はっ?」
『だーかーら、はやくっ、こっちこっち』
二人で土手を駆け下りて暗く細い道を抜ける。
なんだかおとぎ話の中にいるみたいな世界だった。
「ちょっと、まじでここ通り道?」
『はやくっ』
「わっ、暗くてみえねぇ」
『文句言わなーい』
「はいはい」
抜け道を猫のように駆け抜けて、長ーい階段を上がる。
ここがめちゃくちゃきつくてしんどい階段だ。
「うわっ、まだ?」

