二重人格




『ヒロキっ!』


ちょうど前にいた彼に大声を出した。

ヒロキはビクッとしてすぐに後ろを振り返って笑った。


「おうっ、お前遅くね?」


『まぁねっ』


しばらく沈黙が続き、私は何も考えず、ただボーっとしていた。

蝉の声が少しずつなり始めている事に驚いて、じめじめした空気の中を抜けていた。



「お前、あのイケメンと仲良いんだなっ」


『あぁ、タケ?』


「そうそう」


『うんっ、仲良いよ?』


「好きなんだろ?」


ニヤニヤしながら私の事を見てまたニヤニヤする。


『親友だけど?』


ケロッとした顔をして当たり前のようにヒロキを見る。


「っ?
素直になれよ」


そう言ってまたニヤニヤするヒロキの顔は奇妙だった。


『だって、私は好きな人いないし、向こうには好きな人がいる。

あいつはすーんごく良い奴だから仲良しなの』


「なんだつまんねー
お前、そいつに勘違いさせんなよ」


『はい?』


「いやっ、別に」


『あそ』