少年は戦利品を持て余していた。

燃えるように紅いカスタネット。

眺める分にはきれいではあるが、これでは腹は膨れない。

スリをしなければその日の食事にも困るような生活をしている少年には、こんなもの無用の長物なのだ。

「ちっ。」

少年はカスタネットを道端に投げ捨てた。




カツン





軽快で乾いた音が、賑やかな通りの隅で人知れず響いた。