走る、走る。

急いで。それでも、気配は殺して。

城を取り囲んでいた深い森を踏み分け、獣道を辿って。

もう疲れた。

おかしい。私ってこんなに体力なかったっけ?

いくら道が悪いからって、ここまで消耗するもんなの?

魔法を使ったからかな?

ヤバい。足元がふらふらしてきた。

頑張るんだ。

この急いでる時に、足を引っ張るわけにはいかない。

目が霞む。

息が上がる。

胸が痛い。

顔が熱い。

転んだ。

立たなきゃ。

走らなきゃ。

けれど体は言うことを聞かない。

2人の慌てた声がぼんやりと聞こえる。

アケビに背負われてゆさゆさ揺れながら、私は意識を失った。