「王女!王女!ご無事ですか!?」

扉がドカドカと叩かれた。

「誰?」

私に隠れるように手で合図を出しながら、フウカが聞いた。

「シアでございます!城内に賊が現れました!先ほど捕らえて牢に入れておいた者が脱走した模様!安全な所までお逃げください!」

玉座の後ろに隠れながらこれを聞いた途端、焦りで横隔膜が縮んだ。

アケビが見つかったんだ。

やばい。

これでさらに立場が悪化した。

もちろんアケビも捕まれば危険。

けどそれ以上に、サルビアがヤバい。

牢屋からは出られない。最悪の場合、アケビを誘き出すための人質にされる!

「わかったわ。今行く。ちょっと待ってね。」

フウカは私の方を振り返って、慌ててまくしたてる。

「一緒にいた仲間なら大丈夫だよ。その玉座をどかすと秘密の階段があるの。一番下まで行けば、牢屋の鍵とユウ達の荷物がある部屋に出るの。地下牢はその隣だよ。うまく逃げてね。」

扉に手をかけると、開ける前にそっと呟いた。

「…ムチャしないで。」

大丈夫、と私が返事をする前に、フウカはバタンと閉じた扉の向こうに消えていた。