「全く王女はどうされてしまったのだ!?」

廊下を這い進んでいると、途中にあったドアの向こうから、何かを嘆く声が聞こえてきた。

「いきなり『私は王女じゃない』などと!ご乱心なすったか!?」

面白そうだ。盗み聞きしよう。

「よほど王位継承が嫌なようだな。」

さっきまでオーバーに悲嘆にくれていた声に、別の誰かが冷静に答える。

「あぁそうだ。先代の王妃様が亡くなられてからまだ1ヶ月。お心の整理もつくまい。」

また別の声。

どうやら大人数での会議のようだ。

「しかし国には巫女が必要なのだ!未来を見通し、確かな方向へ民を導く指導者は絶対不可欠!これ以上は待てぬ!」

「しかし王女はあのご様子。国を治める事なぞできまい。今日とて無礼な侵入者と2人きりで会いたいなどと!」

俺達の事だ。

ヤバい。

2人のうちどちらかが呼び出されたらしい。

何の用でだ?

「いったいぜんたいなぜだというのです?まるで別人になってしまったようだ!」

よし、決めた。

ドアはしっかりと閉まっているが、液体の俺には何の問題もない。

スルリと中に滑り込むと、手近にいたやつの顔にベタリ、と張り付いてやった。

「よう。アンタら面白そうな話してんじゃねーか。俺も混ぜてくれよ。コイツの命が惜しかったらな。」

聞きたい事は、いろいろとあるんだから。