「そこのネコ、来い。」

そんなに時間が経たないうちに、鉄の扉の向こうから呼ぶ声がした。

「アタシはお呼びじゃないみたいね。しばらく寝るわ。アケビが帰って来たら迎えに行くから、安心して行っといで。」

どうやら助けてくれる気はなさそうだ。

なんで私だけ呼ばれてるの!?

あんなに暴言吐いたから?

ヤバくない!?

殺される!?

いや、さすがにそれはない?

いや、でも…

考えているうちに扉は開き、私は引きずられるように連れ出された。

あれよあれよという間に広いホールにたどり着き、無理やり跪かされる。

部屋中に鏡が散りばめられていて、私がたくさん写りこんでいる。夜に来たら怖いだろうな。

なんて、場違いな事を考えていると、少し高い位置にある、御簾の向こうの玉座から声がかかった。

「やっと来てくれた。あなた達は下がってて。このネコさんと2人で話がしたいの。」

「しかし王女!」

私を連れて来た家来の一人が反論する。そりゃそうだ。囚人と王女を二人きりにできるはずがない。

まぁ、私はなんの罪も犯してはないけども。強いていうなら侮辱罪?

「大丈夫だから。お願い。この人はいい人だもん。」

そうか、王女は巫女で、未来がわかる。私が危害を加えない事はあらかじめ分かっているんだ。

「…仰せのままに。」

家来達は、私にガンを飛ばしながら引き下がる。

「それで?人払いまでして、私になんの用?」

「うーん、やっぱわかんないか。でも会えて嬉しいよ。」

ピョコン、と玉座から飛び降り、御簾をくぐり抜け、王女は私に飛びついた。

「私がわかる?ユウだよね?」