鋭く空を切り裂き、卵が飛んできた。

慌てて避けると私の背後でクシャリと割れる。

「あーぁ、聞いちゃいねぇ。オイテメエら!聞けっての!」

中は乱闘騒ぎの真っ最中で、アケビもバトルに乱入してしまった。

一人取り残され、私は途方に暮れる。

「…」

バトルロワイヤルは、漫画の中でしか拝めないようなとんでもない戦いだ。

半人半獣な人が雄叫びをあげれば、衝撃波でイスが飛ぶ。

怪しげな呪文を唱えて周りを眠らせた人がいたかと思うと、目に見えない何かに殴られたようにすっ飛んでしまう人もいた。

私はどうしたらいいんだろうか。

とりあえず、私をほったらかしにしたまま腕だけ剣に変身して楽しそうに戦っている、あのアホスライムを爪で引き裂いてバラバラにしてやりたい。

「ごめんね、バカばっかりで。『探し人の森』へようこそ。」

いつの間にか私の隣にいた、ワインレッドのドレスがよく似合う女の人が言った。

長い髪、いや紙?がふわふわと揺れる。

セクシーに開いた胸元がなんだかカッコいい。

でも、もったいない。ホントに惜しい。

ちっちゃい。手のひらサイズだ。

背中の羽で私の目の高さに飛んでいる。

もう少しピュアな感じなら、ティンカー・ベルにみたいだと思う。

「バカどもはほっといてギルドに登録しに行きましょ。アタシは『サルビア』。よろしくね。」

大人の女って感じ。

良かった。常識のありそうな人がいて。