痛みを感じる間もなく世界は暗く閉ざされた。

最期に見たのは飛んで行く腕だった。誰の腕なのかは分からない。

でもきっと3人とも同じようにグチャグチャになったしまったのだろう。

不意に視界が明るくなった。

でも、いつの間にか知らない場所に立っている。

薄靄の中に澄んだ大きな川が流れている。川原は小さな灰色の小石が転がり、小さな子供達がその石を懸命に積み上げている。

おばあちゃんから聞いた。

幼くして死に、親を悲しませた子供は三途の川の川原で小石を高く高く積み上げなければ、三途の川の渡し舟に乗れず、成仏できないらしい。

つまり、ここはきっと三途の川なんだ。

死者が渡るべき境界線。

死の世界の一歩手前。

きっと私達の体は原型を留めていない。

よく聞く臨死体験の話のように再び息を吹き返すのは無理だろう。

私達は死んだ。

これは紛れもない事実。

「私達…死んだ…よね?」

不安げにフウカがつぶやいた。

イサナも周りの状況を掴もうと辺りにキョロキョロ視線を走らせている。

あんなに派手に激突したのに、今私達はほぼ無傷だ。その事になんだか違和感を感じる。死んで魂だけになれば外傷は消えるのだろうか?

でも、傷のあるなしなんか今は重要じゃない。

死んだ。

それだけが、私達の胸に重くのしかかる。