LOVE STORIES

 歩き回っていると、見覚えのある場所に戻って来ることが出来た。

 ここはどこだったっけ、と涙で滲む景色を見ていると、ラムネ屋があった通りだと気付く。

 ラムネ屋の場所だったら憶えている。修一はラムネ屋を目指して歩いた。


 ラムネ屋を見つけると、急いでおじさんの所へ駆け寄った。

「おじさん、綾香、知らない?」

 声を出すと、嗚咽が戻ってきた。

「どうした? 迷子か?」

 ラムネのおじさんは泣いている修一を見て驚いている。

「僕が、勝手に金魚すくい見てたらはぐれちゃった」

 修一は自分が悪いことが分かっていたので、下を向いてぶつぶつと喋った。

 ラムネのおじさんは困ったように考え込んでいる。

「ちょっとここで待ってな」

 ラムネのおじさんはそう言ってどこかに行ってしまった。

 遠ざかる後ろ姿に、また一人になるのかと不安になったが、意外にもすぐに戻って来てくれた。

 戻って来たおじさんはもう一人のおじさんを連れている。そのおじさんは黄色い腕章をつけていた。

「迷子ってこの子かい?」

 腕章を付けたおじさんは修一の方を見た。

「そうなんだよ。同じぐらいの女の子と一緒にいたんだけど、はぐれちゃったみたいなんだ」

「このおじさん、誰?」

 修一はラムネのおじさんに隠れるようにして訊いた。

「このおじさんは、祭実行委員って言って、坊ちゃんみたいな迷子の子とかの世話をしてくれるんだ」

「そうだよ。おじさんがきっとお友達見つけてあげるからね。ついておいで」

 腕章を付けたおじさんは手を差し出したが、修一はそれを握らなかった。

「どうした?」

 ラムネのおじさんが不思議そうに見てくる。