LOVE STORIES

 お祭りは家から少し離れた神社で行われる。なので、そこに行くまでにバスに乗らなくては行けなかった。

 バスの中には、修一たちと同じように浴衣を着た人がちらほらいた。ただ、明らかに修一たちよりも年上で、彼らの仲間になったようで少し大人になった気分になる。

「着いたらまずはりんご飴買うんだからね」

「りんご飴っていくらするの?」

 財布の中には、バス代と書かれたビニール袋の他に五百円玉が入っている。

「さあ? 二百円ぐらいじゃない?」

「僕は綿あめの方がいいなあ」

「後で回ってあげるから、まずはりんご飴買いに行くの」

 修一には、なぜそこまでりんご飴にこだわるのか分からなかったが、とにかくりんご飴さえ買ってしまえば、後は好きに回らせてもらえるみたいだ。

「ほら、修一。見て見て。あの辺、お店出てない?」

 お祭りの本部は神社にあり、そこで盆踊り大会が行われる。露店はその周りの商店街に出されることになっていた。

 バスの窓から覗くと、人が多くてはっきり見えなかったが、露店がでていることは分かった。

「本当だ。もうみんないるよ」

「早く行かないと、りんご飴なくなっちゃうよ」

 修一も綾香もバスがゆっくり走っていることがもどかしかった。お父さんならもっと速いのに、と心の中で呟いた。