LOVE STORIES

 外に出ると、空は赤みがかって少し暗くなっていた。太陽が隠れたおかげで、昼間ほど暑くはない。

「お祭り楽しみ?」

 お母さんが綾香に話しかけている。

「うん。まずね、りんご飴買うの。あれ一回食べてみたかったんだ。真っ赤なまあるい綺麗なやつ」

「お祭りって言ったらあれだよね。綾香ちゃん、似合うと思うよ」

「本当? それからね、花火を近くで見たいな。線香花火とかも好きだけど、やっぱり大きいのも見てみたい」

「近くで見たらすごいよ。ドーンってお腹の奥の方に響いてくるの」

「へえー、楽しみ。大太鼓みたいな感じかな」

「もっとすごいよ。大きな花火とあの音の迫力は、自分で体験しないと分からないよ。すごい感動するから」

 うん、と綾香が頷くと、綾香のお母さんもカメラを持って庭に出てきた。

「いい感じの暗さだね。今からお祭りって感じで」

「ママ、遅い。もうお祭り始まっちゃうよ」

「ごめんね。カメラどこにしまってたか、分からなくなっちゃって」

「もう、別に写真なんていいのに」

「でもほら、今日パパお仕事だから、綾香の浴衣姿見れないでしょ。せめて、写真ぐらいは見せてあげようよ、ね?」

「はあい」

「修一ちゃんもこっちにおいで」

 もう「修一ちゃん」を指摘するつもりはなかった。

 そして二人の写真を撮ってもらって、お祭りへ出かけた。