LOVE STORIES

 綾香のお母さんはいつもこんな感じだ。

 綾香は昔から何でも出来た。物心ついた頃から一緒にいる修一からすれば、面白くないこともたくさんあった。

 だから口だけでも負けないようにするのだが、綾香のお母さんは取り合ってくれない。

 修一ちゃんには修一ちゃんのいいところがあるんだからね、と言ってくれるのだが、それが何かは分からない。

「ねえ、早く行こうよ」

 綾香が修一の袖を引っ張っている。

「せっかくだから、写真撮ろうよ」

 お母さんが綾香のお母さんに話しかけた。

「いいね。カメラ探してくる」

 綾香のお母さんはリビングから出て行った。

「じゃあ、庭で待ってようか」

 お母さんは修一と綾香の背中を押して外に出るように促した。

 綾香は、早く行きたいのに、と不満顔だ。