LOVE STORIES

「でも、やっぱり二人で大丈夫かしらねえ?」

 お母さんが綾香のお母さんに訊いた。

「いいんじゃないの? パパもいいって言ってるんだし」

「綾香ちゃんはしっかりしてるから心配ないだろうけど、修一は頼りないからねえ」

 修一も自覚はしているが、はっきりそう言われるのやはり気分が良くない。

「そんなことないよね? 修一ちゃんもしっかりしてるもんね?」

 綾香のお母さんは修一の顔が不機嫌に歪むのを見ていたのだろう。

「また修一ちゃんって言った」

 修一は綾香のお母さんを責めるように指差す。でも、修一ちゃんと呼ばれた方が嬉しかった。

「ごめん、ごめん」

 綾香のお母さんは笑っていた。その様子を見ると、わざと間違えたんだなと気付く。

「綾香ちゃん、修一のことよろしくね。人が多くなったら、手つないであげてね」

「えー、やだよ。友達とかに会うかもしれないし」

 綾香は嫌そうな顔をした。

「僕だってやだよ」

 修一も同じような表情を作る。

「ほら、そんなこと言わないの。お母さんだって心配して言ってくれてるんだから」

 綾香のお母さんが宥めるように二人の頭を撫でた。

 はあい、と綾香は間延びした返事をした。

「手はつながなくても、絶対に離れちゃだめよ。二人で行ってもいいって言ってるけど、パパもママも心配してるんだからね」

「大丈夫だって。あたしがいるんだから」

「綾香がいなくても僕一人でも大丈夫だよ」

「はいはい」