後日、麻美はあの男と将太を待ち伏せていた。

 将太はあのショッピングモールに彼女とデートに行くという情報を仕入れていた。

 これは美香に頼んで入手した情報だった。

 美香に自分から話しかけたのはおよそ一年ぶりで、美香は少し驚いた様子だったが、それ以上に嬉しそうだった。


「早く来ないかな」

 男は心底楽しそうな口調で将太が歩いてくるであろう方向を見ている。

「何であんたがついてくるのよ?」

「お前一人じゃ不安だろ? それに楽しそうじゃん」

「楽しそうって。ねえ、本当にいいのかな?」

「まだ迷ってるの?」

「そりゃそうだよ。遠くから見てたいたずらとは違うんだから」

「じゃあ、ルールな。お前がためらってたら、俺が、『せーの』って叫ぶから、絶対やるんだぞ」

「分かった」

 麻美は頷く。


 しばらく待っていると、将太が女の子を連れて歩いてきた。

 麻美は心臓の鼓動が速くなるのを感じていた。

「来たぞ。行けよ」

 男は麻美の背中を押した。


 男に押し出された麻美は震える足で一歩一歩将太に近づいて行った。

 そして、将太も麻美の存在に気付く。