LOVE STORIES

「あいつがそういう奴だったんだろ。そんなに信用してたの?」


 麻美は自分を落ち着かせるために大きく息を吐きだした。

「あたしがいじめのことをふっ切れたの、あいつのおかげなんだ。昔、いじめられてたことも、心のどこかでそれが引っかかってることも全部話した。そしたらあいつは、そういうのは自分の中で決着をつけないとダメだって言ったの。だからあたしたち仕返しすることにしたの。仕返しって言っても、ちょっとしたいたずらして遠くから見て笑うだけ」

 時には自転車に買ったばかりの鍵をつけて動けなくしたり、定期を盗んで改札の前で慌てさせたりと、わざわざいじめていた人の所へ行って、一人ずつくだらないいたずらをしかけた。

 そうすれば麻美がやったことはばれないし、慌てる様を見て心の底から馬鹿に出来る。

 もちろん、一通り笑い終わった後、自転車の場合は離れた隙に鍵を開けに行ったし、定期の場合は将太が拾ったふりをして返した。

 仕返しとまではいかないかもしれないが、直接的に被害を与えるとまた自分の中に嫌な感覚が残ってしまう。

 一瞬、馬鹿にするだけでも、仕返ししたという事実が重要なのだ。


 そして麻美が何より嬉しかったのは将太が、自分の過去と決別するために付き合ってくれたということだ。

 一緒に過去を背負っていってくれると感じていたのだ。