LOVE STORIES

「よう」

 男は陽気な声で話しかけてきた。

「何してるの?」

「また小学生がポイ捨てしてやがったから、注意してたんだよ。最近の教師とか親はゴミの捨て方も教えねえのか?」

「別に最近に限った事でもないでしょ。その辺見てみなよ。ゴミだらけじゃん。これ、全部子供だけが捨てたわけないでしょ」

「だからこそ、子供にはちゃんと教育しなきゃダメなんだよ」

「あっそう」

 麻美は立ち去ろうとした。


 しかし男は、「おい」と呼びとめた。

「何?」

「まだお前の話、聞いてないんだけど」

「は?」

「だって、お前、会ったばっかじゃ話せないって言ったけど、もう二回目じゃん」

「そういうことを言ってるんじゃないって」

「じゃあどういうことだよ」

「友達とか、そういう関係じゃないと無理だってこと」

「そもそも友達とかそういうのが良く分かんないって。どうしたら友達なんだよ」

「少なくとも名前ぐらいは知らないとね」

「じゃあ名前教えてよ」

「何で、そんなにあたしのこと聞きたいの? あんたに関係ないじゃん」

「何でって、あんなこと言われたら誰だって気になるじゃん」

「大きなお世話。聞いたところであんたに何か出来るわけないでしょ」

「そんなの分かんないだろ」


 麻美はいい加減にうっとうしくなってきた。

 仮にここで麻美にあったことを全て話したってこの男には何も出来ないのだ。

 せいぜい同情したふりが限界だろう。