「それがどうかしたの?」

 小学生は何を言われているのかさっぱり分からないみたいだ。


「だからな、お前はこの世界ではそんな微生物よりも役に立ってないってことなんだよ。こんなちっちゃい見えない奴にも負けてるんだぞ」

 小学生は不貞腐れた顔になった。
「そんなことないもん」

「だったら、このゴミは持ち帰れ。微生物にだってな、やらなきゃいけないことはいっぱいあるんだよ。お前らだってこれ以上宿題増やされたら嫌だろ」

「うん、やだ」

 そう言って小学生は投げ捨てたティッシュを拾った。

「ちゃんと家のゴミ箱に捨てるんだぞ」


 うん、と答えて小学生たちは麻美の方へ歩いてきた。

 そこで、小学生を見送っていた男と目が合った。

「何?」

 男が訊いてくる。

「別に」

 麻美はそっけなく答える。

「別にって、ずっと俺の方見てたじゃん」

「別に」

 麻美は立ち去ろうとして、男の横を通り過ぎようとした。

「ちょっと待てって。じっと人のこと見てて、別に、はないだろ」

「あんた、いつもあんなことしてるの?」

「いつもってわけじゃないけど、ああいうの見つけたら注意はするよ」

「そのうち、保護者に怒られるよ」

「何で? 俺、別に悪いことしてないし」