何も考えずに歩いていると自然と麻美の通っていた小学校に足が向いていることに気付いた。

 麻美の進む方向から下校途中の小学生が歩いてくる。

 小学校の時は良かった。

 煩わしい人間関係もなく、ただ気の向くままに生きていればいいのだから。


 いじめが始まったのは中学に入ってすぐのことだった。

 いじめられたのは、おそらく元々明るい性格ではなかったからだろう。

 中学では近隣の小学校の生徒と一緒になる。

 初めて見た人からすれば格好の存在だったのだろう。


 中学生ともなれば他人に対して優越感を抱きたくなるものだ。

 それは、勉強であったり、スポーツであったりと人によって様々だったが、いじめてきた連中にとってその象徴が麻美であったということだ。


 その当時は時間を巻き戻せたらと思っていた。

 小学校の時なら、こんなに辛い思いはしなかった。

 しかし、次第に小学校の時の友達もいじめに加わっていることに気付く。

 これならまだ見て見ぬふりをしてくれていた方が良かった。

 そのことに気付いて以来、麻美は心の拠り所を探すのをやめた。

 何をされたって徹底的に無視をした。

 相手を自分の世界から抹消することで、少しだけ相手と闘えた気持ちになったのだ。