校門を出ると何となくそのまま家に帰る気がしなくなった。

 だけど行くあてもないので、とにかく回り道をして帰ろうと決めた。


 高校ではたまたま麻美をいじめていた奴らと同じにならなかった。

 麻美が敬遠したわけでもなく、学力のレベルが違ったというだけのことだ。

 しかし、そうは言ってもずっといじめられていた麻美にとっては全てをなかったことには出来ない。

 初めは今と同じように誰とも話せなかった。

 そんな中で初めに話しかけてくれたのが美香だった。

 美香は麻美と違って、明るく面倒見のいい姉御肌で、誰とも仲良くなれない麻美を見て話しかけてくれたのだ。

 そして、美香と仲良くなると自然と他の友達とも仲良くなれた。

 学校帰りにカラオケに行ったり、ファミレスでだらだら喋ったりと普通の女子高生らしい生活を送っていた。

 だけど、今となってはその友達も話しかけてこない。

 麻美が拒絶しているからだ。


 唯一、まだ気にかけてくれている美香も本心ではどう思っているか分からない。

 最近では周りからのイメージが美香にそうさせているように思えてならない。

 ここで麻美を見捨てれば周りの期待を裏切ることになる。

 そうなると今まで築き上げた『美香』と言う存在価値がなくなってしまうのではないかと恐れているのだ。

 だから、一緒に帰ろうなどと言っているが、本当にまた仲良くなられては困るのだ。

 人間の心は誰しも相手を向いているふりをして結局は自分の方にしか向いていない。