「最近の話はしなかったんですか? わざわざ今になって言ってくるぐらいだから、最近の出来事にヒントがあるかもしれませんよ」

 あまり人のプライベートを喋るのは良くないと思うのだが、どうせ高橋が明日香と会うことはないからいいだろう。

「そう言えば、最近婚約破棄したって言ってた」

「大事件じゃないですか。その理由は聞きました?」

「考え方が合わなかったみたい。明日香は田舎に帰りたかったみたいなんだけど、相手は仕事辞めたくなかったんだって」

「明日香さんって言うんですね。それで、明日香さんは何で田舎に帰りたかったんですか?」

「極度の都会嫌いかな」

「変わってますね。普通の女の子は都会に憧れるのに」

 何かが引っかかった。少しずつ輪郭が浮かび上がってくる。

「どうしたんですか?」

 高橋は達也の表情が変わったことに気付いた。

「そうだ。あの時、明日香は東京に憧れてたんだ。だから、俺、大きくなったら東京に来いって言ったんだ。東京案内してあげるって」

「今、東京にいるんですか?」

「うん」

「じゃあ、間違いないですね。だから、思い出したら会ってくれるって言ったんじゃないですか?」

 しかし、今さらどこを案内すればいいのだ?

 既に都会嫌いの明日香にどこを見せればいいのだろう?

「でも、素敵ですね。昔、好きだった子と再会するなんて。運命感じますね」

 再会を果たした今の明日香に、今の自分が出来る約束の果たし方は何だろう?

 他の誰でもない達也だからこそ出来ることを探し続けた。