LOVE STORIES

「まさか、あの明日香ちゃんとまた会うとはねえ」

 母親は感慨深げに言う。

「俺もびっくりしたよ」

「でも、よく分かったね。大分、大人っぽくなってたでしょ」

「確かにそうだけど、面影は残ってたよ」

「あんた、明日香ちゃんのこと大好きだったもんね。帰りたくないって泣いて大変だったもん」

「そうだっけ?」

 憶えていたが、恥ずかしいのでとぼけた。

「今、あの子何してるの?」

「結婚するはずだったから仕事辞めたんだけど、結局破談になったから今は何もしてないって。田舎に帰るって言ってた」

「あの子も苦労してるんだね」

「そうみたい」

「母さんはあの家と連絡取ってないの?」

「年賀状ぐらいは出すけど」

「明日香の家は?」

「明日香ちゃんのところは全くだね。元々付き合いのある家じゃないし」

 昔話をしていたい気もしたが、時間を見ると既に夜の十時を回っていた。

「明日も仕事だし、そろそろ帰るよ」

 そう言って実家を後にした。