達也は東京についてから、すぐに自分の家に帰らず実家に寄った。
小さい頃からずっと東京にいるのだが、社会人になってから一人暮らしをしている。
新幹線の中では明日香とあの当時の話をした。
とは言ってもお互い曖昧な記憶しか残っていないので、なかなか話がかみ合わなかった。
そのため、当時の写真でも見れば何か思い出せるのではないかと思い、実家に寄ったわけだ。
しかし、残念ながら当時の写真は残っていなかった。
唯一の収穫は母親から話を聞けたことだった。
京子おばさんは母親の姉だった。
結婚はしていたものの、子供には恵まれなかった。
夫の家に嫁いであの田舎の家に住むことになったそうだ。
なので、母親としても気軽に遊びに行けるわけではなかったのだが、あの時はたまたま向こうの家族が遊びに来てはどうかと声をかけてくれたのだった。
明日香は近所の子供で、よくあの家に遊びに来ていたそうだ。
母親は初めは達也が退屈するのではないかと心配していたのだが、明日香のおかげでその心配が杞憂に終わった。
朝起きてから日が沈むまで二人で色んなところで遊びまくった。
それから半年も経たないうちに、おばさんは交通事故で亡くなった。
街灯のない暗い田舎道を歩いていると、人がいないと思って飛ばしまくっていた車にはねられたそうだ。
おばさんがいなくなってしまえば、その家とは全くの無関係になってしまうので、それ以来の付き合いはなくなった。
