LOVE STORIES

「ねえ、会ったんでしょ? どうだった?」

 美佐子は会うなり、興味を隠すこともせず訊いてきた。

「会わなかった」

 真希は、週明けの朝ということもあってあまり元気がなかった。いや、決してそれだけが理由ではない。

「何で?」

「だってかっこよくなかったもん。店の外から顔だけ見て帰ってきた」

「じゃあ、しょうがないね」

 これを仕方ないという美佐子も少し変だが、そう感じるようになっている自分も少しずつ変わっている気がする。

「次のとはいつ会うの?」

「今度は大学生だよ。しかも国立」

「えー、めっちゃいいじゃん。どうしてそんなことになったの?」

 美佐子は驚きと羨望の口調で言った。

「幼馴染が通ってるの。こないだたまたま会ったから、お願いした」

「いいなあ。真希が仲良くなったらあたしにも別の人紹介してよ」

「今の彼氏はどうするの?」

「そんなの別れるに決まってるじゃん」

 いつもと変わらない美佐子との会話だった。

 だけど、真希はどこかうわの空だった。

 俊介に会ってから、何かが変だ。理由は分かっている。

 説教すらされなかったせいだ。いつもならくだらない嫌みを言われるものだが、あの帰りはいたって普通な世間話しかしなかった。

 真希は俊介に相手にされなかったのだ。自分こそがくだらない存在だと言われている気がした。