LOVE STORIES

 休みの日で、しかも電車で来たにもかかわらずあんなはずれを連れて来て、西村は何を考えているのだろう。

 後で電車代だけでも請求しなきゃな、と苛々しながら券売機で切符を買っていると、後ろから不意に声をかけられた。

「あれ。真希じゃん」

 相手の顔を見ると、真希のよく知る人物だった。

「俊君」

 俊君とは、三歳年上の真希の幼馴染だった。正確には俊介という名前なのだが、おばさんたちがそう呼んでいたので真希もそう呼んでいる。

 昔はよく遊んでもらって兄妹のような関係だったが、最近はあえて会うようなことはない。

「久しぶり。元気だった?」

 俊介は嬉しそうに顔を緩めた。

「元気だよ。俊君は?」

「俺? どうだろう。大学忙しいからなあ」

 そう言えば俊介は有名国立大学に通っていたはずだ。

 これはラッキーだと真希は思った。高校生なんかより、国立大学生の方がよっぽどいい。

「ねえ。俊君の大学の友達で女子高生と付き合いたいって人いない? 出来るだけかっこいい人で」

 俊介の外見は悪くはないがいいとは言えない。昔はかっこよく見えたものだが、おそらくそれは年上のお兄さんというフィルター越しのせいだろう。

「どうしたの? 急に」

「さっき、友達に男の子紹介してもらうはずだったんだけど、全然かっこよくなくて。俊君、いい人誰かいない?」

 嫌な顔でもされるのかなと思っていたが、俊介の表情は特に変わらない。

「そういうことか。誰か当たってみるよ」

 あまりにもあっさりとした承諾に真希は拍子抜けしてしまった。同時に何かが物足りない。

 何も言わないの? 妹みたいに可愛がっていた子がこんなことを言っているのに。

 自分が今何を求めているのか分からない。だけどそれは彼氏ではないことは真希にも分かっていた。