あの頃は初めて過ごす彼女とのクリスマスに向けて、色々友達にリサーチしていた。

 プレゼントで女の子が一番喜ぶものは何かとか、どこのイルミネーションが一番きれいかとか雑誌や友達から情報を得て着実に計画が立てられていた。

 その矢先に別れたいと裕子から告げられた。何度も説得したが裕子の気が変わることはなかった。

「別れたのって、ちょうどこれぐらいの時期だったよな?」

「そうだね」

「あの時、俺一緒にクリスマス過ごせると思って、プレゼント買うためにずっと貯金してたんだよ。ほら、これもらったじゃん」

 拓也は左手の裾を少し上げて、手首に結ばれたミサンガを見せた。

「まだこんなのつけてるの?」

「これって切らなきゃ外せないんだよ。これにハサミ入れる勇気はないよ」

 このミサンガはサッカー部の大会の前に裕子が作ってくれたものだった。生まれて初めてもらった彼女からのプレゼントで切ってしまうことなど出来なかった。

「彼女とか何も言わないの?」

「前の彼女に言われたことあるけど自分で買ったって言った」

「あんたのそういうとこがダメなんだよ」

「だって捨ててって言われたら嫌じゃん」

「本当に男らしくないね」

 そう言う裕子の声は少しだけ優しくなった気がした。