LOVE STORIES

 その場に残された二人に会話はなかった。

 あまりの手持無沙汰に拓也は何度もビールを少しずつ呑んだり、キョロキョロ辺りを見回してしまう。

 美帆が早く帰って来てくれないかなと、店の入り口を何度も確認したが帰ってくる気配はない。

 とうとう耐えきれなくなって、拓也は裕子に話しかけた。

「久しぶり」

 裕子に返事はない。

「卒業して以来会ってないもんな。話すのなんか別れて以来だよな」

 裕子は大きくため息をついた。

「あんた、何でこんなとこにいるの?」

「え?」

「美帆が珍しく呑みに行こうなんて言うから楽しみにしてたのに」

「俺も潤一が呑みに行こうって言うからついてきただけだよ」

「あーあ、本当別れてよかった。ナンパするような男になるなんて思ってもみなかったな」

 嫌みたっぷりに裕子が言った。