LOVE STORIES

 その後もなかなかの盛り上がりで、すっかり四人は仲良くなった。厳密に言えば、拓也と裕子の関係を除いては。

 一時間近く経っても、裕子が拓也に話しかけてくることはなかった。拓也の方も裕子に話しかける勇気はなかった。


 突然潤一が、あっという声を出した。

「どうした?」

 拓也が訊く。

「何か物足りないと思ったら、たばこがなかったんだ。ちょっとコンビニ行って買って来る」

「早くしろよ」

 そう言って、潤一を送り出した。

「この近くってコンビニあったっけ?」

 美帆がこのあたりの地理を思い浮かべるように少し上を向いて言った。

「あたしたちのところが一番近いよね。帰ってくるまで三十分ぐらいかかるんじゃない?」

 裕子が答える。

 拓也は焦った。五分もあれば帰ってくると思ったから、引き止めなかった。もしこの状況で美帆が席を立ったら裕子と二人きりになってしまう。

 酒を飲んでいるとはいえ、こんなことも気付かなかったなんてと自己嫌悪に陥った。

 そして、最悪の状況を迎えることになる。

 机の上の美帆の携帯電話が鳴った。

「あ、電話だ」

 美帆が相手の名前を見る。

「ちょっと長くなるかも。ごめんね」

 そう言って店の外に出て行った。