LOVE STORIES

「えっと、拓也です。よろしく」

 裕子が隣にいるせいで、言葉が全く浮かんでこなかった。我ながらみっともない自己紹介をしてしまったと恥ずかしくなった。

「えー、それだけ?」

 美帆はからかうようにわざとらしいつまらなそうな顔を作った。

「お前、クールな男がもてるって勘違いしてるんだろ。こういう場ではな、そんなことよりノリの良さが大事なんだよ」

「そうだよ」

 美帆は潤一に同意した。

「だいたい、最後のやつは大トリなんだから、面白いこと言わなきゃダメなんだよ。みんなが自己紹介してる間に考えとけよ」

「みんなが自己紹介してるんだから、それ聞いとかなきゃダメだろ」

 拓也は反論する。

「お前は柔軟性がないのか? 聞きながら面白いことを考えるんだよ」

「無理言うなよ」

 めちゃくちゃなことを言っているが、潤一のおかげで拓也の自己紹介も盛り上がった。ただ潤一にそんな気遣いが出来るわけがなく、本人がはしゃぎたいだけなのだ。

 拓也は場の空気を壊さずにすんでほっとしているが、裕子が話しかけてこなかったことが気になった。