「とりあえず、まずは自己紹介からだな。じゃあ、先にそっちからお願い」

 潤一が言う。どう考えてもこの場合はこっちからすべきだろうが、このミスは拓也にとって助かった。裕子が拓也と付き合っていたことを言うのか、それとも初対面を装うのか分からなかったからだ。

「えーっと、じゃああたしから」髪の長い女の方が話し出した。「美帆です。今21歳です。裕子とは、あ、彼女、裕子って言うんですけど一緒のバイトで同い年だからめっちゃ仲いいんです」

「美帆ちゃんか。俺たちも21だからタメ口でいいよ」

 潤一が合いの手を入れた。

「じゃあ、遠慮なく。あたしたちコンビニで働いてるの」

「コンビニってずっと立ちっぱなしじゃないの? めっちゃ大変そう」

 そう言う潤一の口調からは全くねぎらいが伝わって来ない。

「そうなの。時給もよくないし、何回かやめようと思ったんだけどね。結局、ずっと続けちゃってる」

「また今から新しいバイトってのも大変だもんね。じゃあ、次は裕子ちゃんだっけ?」

 潤一は裕子に自己紹介をするように促した。拓也は緊張する。