「おい、チャンスだぞ」

 潤一は大喜びで隣のテーブルを何度も見る。

「絶対おかしいって。こんなとこに女の子が二人で来るわけないって。多分、男待ちだよ」

 拓也は慌てた。まさか本当にこんな客が来るとは思わなかった。

「そんなのまだ分かんねえだろ。とりあえず訊いてみろよ」

「お前がナンパしたいんだろ。お前が訊けよ」

「仕方ないな」と言う潤一の顔は決して嫌そうではない。

 潤一は隣のテーブルに目一杯体を伸ばして、「すいません」と声をかけた。

「はい?」

 髪の長い女の方が返事した。拓也から顔が見える方でなかなか可愛かった。

「お二人ですか?」

「そうですけど?」

 女は不審がっている。急に見知らぬ男に声をかけられたのだから無理もない。

「僕たちも二人なんですよ。よかったら一緒に呑んでもらえませんか?」

 これは脈なしだなと思っていると、意外にも、「いいですよ」と返事が返ってきたものだから手に持っていたジョッキを落としそうになった。

 潤一が自慢げにウインクをしてきた。全く似合っていなかったのでこちらが恥ずかしくなる。

 全く予期していない結果になったが、男二人で呑むよりはよっぽどましだと思った。もしかしたら本当に彼女が出来るかもという欲まで出てきた。

 せっかくなのでもう一人の女の顔も見たいと思い、そちらに視線を送ると女もこちらを向いてきた。

 その顔を見て心の底から驚いた。相手の女もぎょっと目を見開いた。

 そこにいたのは、拓也の高校時代の元カノだった。