潤一ははあとため息をついた。

「お前、外があんなにクリスマスムードなのに焦らないの?」

 拓也は考える。クリスマス前になればやはり一人もしくは男と街中を歩くのはためらわれる。

 しかしクリスマスだからと言って必死に彼女を探すのは、どこかの偉い人の手のひらの上で踊らされているようでみっともない。

 拓也は答える代わりに、ビールのおかわりを店員に注文した。

「なあ、今の店員はどうだ? なかなか可愛かっただろ」

 潤一が周りに聞こえないように顔を寄せて小声で言ってきた。

「まあなかなか良かったけど。あれは無理だろ」

「何で?」

「お前、こないだの店員どうなった? アドレス書いて渡しただろ?」

「あいつはダメだ。礼儀すら知らない女だった」

「結局連絡なかったんだろ。こういうとこで働いてる女ってそういうの慣れちゃってるんだよ」

「お前な、こういうのは数撃たなきゃ当たんないぞ。ダメ元でいいだろ」

「よくねえよ。こういうのこそしっかり狙いを定めないとな」

「じゃあ、誰行くかお前が決めろよ」

「こういうとこに女同士で来るようなのがいればな」と絶対にありえないことを言ったつもりだったが、本当に横のテーブルには女の子が二人で店員に案内されながら席に着いた。