家族になろうよ!


机に伏せる。

ここ数日および今日の昼間の労働で、体が芯からだるい。

九畳一間の旧龍ヶ崎邸に置いてあった物の量などたかが知れているから、引っ越しそのものは楽だったのだが、俺の場合は心労もあるからな。

というか、あのオンボロアパートは、ここより酷かったぞ。

金が無いのだろうか。

もしかして借金があるんじゃないだろうな。

だとしたら親父は集られているってことに……ならないな。

集るならもっと明らかに金を持っていそうな人間を選ぶはずだ。

どうもあの親子は得体が知れないから、いちいち疑いたくなってしまう。


また笑い声がした。

聞いていたくない。

もう、寝ちまうか。

コンビニに行く前に風呂に入っておいてよかった。

俺は押し入れから布団を引っ張り出すと、それをざっと広げた。

予想通り、狭くなった部屋に布団は入りきれず、足元の方を十五センチほど折り返さなければならなかった。

わびしい。

こんな姿を見たら、日頃俺の容姿をからかってくる学校の女子達もドン引きして、以降、あいつらの中でおもちゃ程度だった俺の地位は蔑みやいじめの対象へと転落するに違いない。

しかも親父の恋人と、その娘と同居しているなんて、内情は知らないが円満で裕福そうに見える家庭でぬくぬく育っている様子のお坊ちゃんやお嬢さん達には荒みきっているように映りそうだ。

この家の全てを、絶対に知られてはいけない。

絶対に。


布団にもぐると、すぐに睡魔がきた。

抗わないことにしよう。

そうすれば、足が伸ばせない狭さに情けなくなったり、先のことで憂鬱になったりしなくて済むのだから。

居間から漏れてくる笑い声が、ぐんぐん遠ざかっていく。

それがそのまま三人との距離のように感じられて、ああ俺は一人になってしまったのかなと思いながら、夢のない眠りに落ちていった。