「私、嫌じゃなかったから。
央雅くんにキスされても、胸を触れられても、嫌じゃなかった」
決して軽く言ってるつもりじゃないけれど、央雅くんに与えられた時間は甘くて潤いがあって、生まれて初めての感覚に戸惑いは確かにあったけど。
絡まる舌の熱も抱きしめられる強さも、央雅くんの鼓動も、全然嫌じゃなかった。
「央雅くんが、私の嫌がる事をしないっていう直感は当たってた。
びっくりはしたし、初めてだからどうしていいのかわからなかったけど、嫌じゃなかったから…」
抱きしめられてるままだから少し必死で見上げながら、どうにか話してるけれど、話しながらも何を言ってるのかよくついていけてなくて。
言いながら、自分の中に生まれた初めての感情を受け止めて理解して…。
「えっと…とにかく、嫌だって思わなかった。
央雅くんが悪い人だって思わなかったし、痛い目に遭わせられるなんて全然思ってない」
結論はこんな感じかな…。
自分でも驚くくらいに央雅くんのキスを落ち着いて受け止めてる。
男の子と付き合ったこともない私はもちろんキスなんて初めてだけど、今まで想像していたよりも温かくて優しいものだった。
今こうして央雅くんの腕に包まれてるのさえ、戸惑いはあっても嫌だとは思わない自分に気付いていて、それってどう解釈していいのかな。
央雅くんが言うとおりに、私って男の人に隙だらけってことなのかな。
徐々に顔を歪めていく央雅くんは、無言のまま私を見ている。
まるで呆れてるように、言葉もなくただ見つめてるだけ。
「あの…央雅くん…?」
その顔からは、私に対して肯定的な気持ちは感じられない。
初めて見る生き物のような、少し距離を置いてしまった目が悲しい…。

