きっと、ほんの少しの短い時間だったと思う。
二、三分だったのかもしれないし、十分かもしれないけど…。
とにかく初めての時間は、私には驚きの時間で、唇が離れて自由になった口にも、暴れていた手が離れて、元の形に落ち着いた胸にも、まだ央雅くんの残した余韻がたっぷりと残っていて、どう気持ちをおちつかせればいいのかわからない。
おぼつかない足元に気付いてるのか、抱きしめる力だけはそのままで、腕の中から解放しようとしない央雅くんの鼓動も、さっきより少し速いように思える。
私の肩に顔を埋めて、荒くなった息を落ち着かせながら、
「わかっただろ?」
相変わらず、苦笑しているのがわかるような声でそう呟いた央雅くん。
「…隙を見せたら痛い目に遭うって言っただろ」
「…」
「結乃が嫌がるような事、平気でするような男はいっぱいいるんだ、簡単に男を部屋に入れるなよ。
俺みたいな男…気をつけろよ」
「…央雅くんは、違うよ」
「は?」
「私の直感は当たってたって…ちゃんと人を見る目はあるってわかったし。
央雅くんみたいな男の人、ばかりだといいんだけど」
「…だから、何言ってるんだ?意味わかんないんだけど」
眉を寄せて荒い声を上げる央雅くん。
整った顔の人が怒りを持つって色気があるんだな…。得だな…。
落ち着いた気持ちでじっと央雅くんを見つめた。
きっと、まだ熱い私の体を隠せないままの瞳で。

