揺れない瞳

「私…悩み事を解決するために生きてきたし、周りを気にしすぎながら大きくなったから、人に対する直感はあまり外れた事ないから…央雅くんが私の嫌がる事はしないって感じて…」

何をどう言って気持ちを伝えればいいのかわからないままに、感情が揺れるに任せて言葉をつないで。
今この状況がどういう成り行きによるものなのかも曖昧だし、央雅くんの考えてる事も全くわからない。

目の前に整った顔がどうしてここにあるのかも謎。

「間違ってるかな…」

心細い声が思わず出たのは、そんな整った顔が私を刺すように見つめてるから。

「あ…あの、近いです。ちょっと…」

握られたままの右腕を振りほどこうと、どうにか抵抗してみる。
さらに力の入った央雅くんの手は、それを拒むようで。

「央雅くん…」

『離して』

そう言おうとして、視線を央雅くんの瞳に合わせた途端に。

「…っ央…が…くん…」

強い力で引き寄せられた体は央雅くんの両腕にすっぽり包まれた。

央雅くんの胸に押し付けられて、固定された私の顔は動けない。聞こえてくるのはただ央雅くんの鼓動。

背中に回された手から伝わる央雅くんの温かさが
上へ下へと滑らかに移動する。

まるで撫でてるよう。

とくんとくんと響く鼓動と一緒になって、私を落ち着かせようとしてるようにも思えるけれど。

やっぱり慣れないこんな状況に、体は強張って動けない。

「おう…が…くん…」

本当に小さな、届いたのかどうかも怪しいくらいの声を、やっとの思いで吐きだしてみるけれど聞き入れる様子もなく、私へ届く力強い腕の力は緩むことなく。

今にも飛び出してしまいそうになってる心臓の音だけが私の中に響いて、とっくに受け入れられる限度を超えた恥ずかしさが体中に溢れ出す。